メッセージ:本イベント開催に際して
ロンドンからはじまったアロットメントは、この数年間、ロンドンと日本の架け橋になるようなプロジェクトを行いたいと考えてきました。そこで、2012年のアロットメントは、東京と名古屋で、イベント『ロンドンの非営利団体ACME(アクメ)と、アーティストの制作環境を考える』を開催するに至りました。
日本におけるアーティストの制作環境はどのような状況でしょうか。個人ベースのものから行政との共同でつくられるものまで、さまざまな試みが現れてきていますが、まだまだそこには数多くの障壁があるようです。一方、ロンドンのアートシーンに目を向けると、そこにはアクメ・スタジオという団体が存在します。
アクメ・スタジオは1972年に創設された、若手アーティストの活動を支援するチャリティー団体です。ロンドンを拠点に、アーティストへの低価格で質の高いスタジオの貸し出し、また滞在型制作スタジオの供与や各種アワードの享受を通じて、これまで40年間に5000人以上のアーティストを支援してきました。特にロンドンで育まれ、今、現代アートの最前線で活躍するアーティストたちの多くは、アクメ・スタジオが提供するスタジオを利用してきたといいます。しかし、世界一物価の高いロンドンで、なぜそれらが成し遂げられてきたのでしょうか。
イベント『ロンドンの非営利団体ACMEと、アーティストの制作環境を考える』では、アクメ・スタジオのメンバーを迎え、プレゼンテーションをしていただきます。40年間、ロンドンのアートシーンの根底を支えてきたアクメ・スタジオの活動の技術的な側面と理念、そしてその背景にあるアクメ・スタジオの作家に対する熱い思いをお話していただきます。アーティストに必要な環境を考えた上で、地主や公共団体、市町村、地元コミュニティー、不動産・地域開発業者、それぞれへのメリットを旨く配分していく。そこにはどのような知恵があるのか。きっと日本の私たちにもヒントになるようなことが、たくさんあるに違いありません。また、東京では、アーツ千代田3331の中村政人氏と、アロットメント2013審査委員の住友文彦氏が選出した、日本各地で理念を持ちながら、アートやクリエイティブな“場”をつくりだすことに関わっている9組の活動報告プレゼンテーションも行います。
アートに携わる方はもちろん、これからアートに関わりたいと思っている方、アーティストの制作環境に興味のある方、また建築や不動産、ディベロッパーの方々も是非ご来場ください。企画の背景には、この機会を通して、さまざま人々が繋がり、新しい活動やビジネスへと向かうきっかけになればという想いもあります。アクメ・スタジオによるプレゼンテーションから情報やアイデア、問題を共有し、来場者のみなさんと共に、次の時代のポジティブな“アーティストの制作環境”を考える機会にできればと思います。それでは、会場でお待ちしております!
アロットメント事務局一同